変拍子嫌いな人向けに、違和感のない変拍子を作り始めた
――じゃあ次の話題に移りますが、MUSQISをやろうと思ったきっかけやMUSQIS の音楽的背景は?
変拍子ブームみたいなのあったじゃないですか。そのときポストロックに対してアンチな人もいたし。なんで変拍子嫌いかというと、「むりくり合わせた変拍子が嫌いだから」と言う人たちが多くて。
――わかる。例えばYESとかKING CRIMSONみたいな変拍子の作り方でなく、変拍子の突飛感というか、「これをやると驚くんじゃないか」っていう感じ。
それで、「変拍子嫌いな人向けに、違和感のない変拍子」を作り始めたりとか、小さい思いつきを重ねていった結果なんですけど。だから基本的にはゴリッとしたものが割と好きなんだけど。久石譲とか割と聴くんですけど、久石譲っぽくてゴリッとしたものって割とないよなあと。
――なるほどね。クラシックとかピアノとかやってる人とか、”みんなのうた”みたいな童謡も、実はかなり変拍子が入ってるからね。
そうですね、言い回しで拍が変わっちゃったりとか。そういうことをちょっとずつ消化したかった。
――MUSQISには、インストで変拍子というよりはバックが少しずれてたりクラウドロックとかプログレッシブとかジャムセション的な感じで、長尺な中でいろいろ変化してく感じがあると思って。それをひとつのバンドの名前でいうとROVOになっちゃうんだけど。やっぱり影響あるの?
やっぱりすべからくあるんじゃないですかね。
――downyとか?
downyとかコピバンいちばんやりたかったですね。やったことないですけど。downyと54-71を観てましたね。
――高校生のときdowny観に行ってたの?
そうですね、この前fresh!とも対バンさせてもらって。あと、今となっては貴重な体験なんですけど当時BLONDE REDHEAD観に行ってるんですよ、MELT-BANANAと対バンの。
――俺そのときもう25、6歳だもんなぁ。
MELT-BANANAが盛り上がりすぎて、スルメ系のBlondeRedheadをかすめちゃって、人帰り始めちゃうっていう。BLONDE REDHEADは大好きですね。MELT-BANANAも好きですね。
――BLONDE REDHEAD好きっていうのはなんとなく分かるなぁ。
今、鞄の中にTシャツありますよ、着替えで。
――「このバンドいなかったらMUSQISやってなかったなあ」っていうのある?
THE MARS VOLTA、AT THE DRIVE-IN、TOOLじゃないですか。高校時代は家でTOOLのコピーしかしてなかった、TOOLのギターコピーすることを日課にしてたような。
――TOOLはギターはそんなに難しくないからね、ドラムはくそ難しいけど。
ギターも、けっこう変なことしてて。どう弾いてるか分からないところとか。単純なのに分からないところとか。
――なるほど。THE MARS VOLTAはアルバムどれ好き?
『Amputechture』か『Frances the Mute』。ドラムのセオドア(※初代ドラマーのJon Philip Theodore)が好きなので、アルバムだったら最初の3枚。あとは、Omar Rodriguez-Lopezのソロの音源もほとんど持ってます。
――Omarがやってたダブバンドなんだっけ。
DE FACTOは、CDで持ってるのは2枚。データで持ってるのも2枚くらいかなぁ。たぶん全部ある。
――YESとかは聴かなかったの?
めっちゃ聴きましたね。YES、KING CRIMSON、MAGMA、AREA、TAï PHONG、UNIVERSE ZERO、DOCTOR NERVE……(延々と続く)。
――NEU!とかは?
聴きましたね、(TangerinDreamの)Dieter MoebiusというかMOEBIUS / PLANK / NEUMEIERの『ZeroSet』、とか。中学校のときにアニメ好きだったんですよ、「AKIRA」とか「攻殻機動隊」とか。「MEMORIES」っていう大友克洋監督の映画があって、エンディングが石野卓球で、それからわりとテクノ耐性がついてきて。ケンイシイの「EXTRA」っていう、STUDIO4℃が作ってるのかな? のアニメのPVがあって、そこからわりとテクノにもいってて。あと映画が好きだったから。「トレインスポッティング」で(UnderWorld)のBornSlippyが流れるじゃないですか、テーマ曲的に。ああいうのもベタベタですけどわりと聴いてた。あとConeriusの『Fantasma』とか『Point』とか。
――俺とあんまり変わんねえな(笑)。
高校入ってからNinja TuneとWarp Records、Hefty、Kindred Spirits、Nonplace、Tzadik、Ipecac、PANとかその辺りのレーベルはかなり聴き漁るようになって。PANからリリースしてるASTRO(長谷川洋)さんとはよくソロとかで一緒にやります。
――やっぱりテクノとか聴いてても、肉体的なほうにいってたの?
はい、この前観たBjörkのツアーメンバーで有名なMATMOSも一緒に来日してたJeff Careyもすごいフィジカルだった。あとレイラっていう人がいるんですよ、この人もbjorkのポストのツアーメンバーで。bjorkも大好きですね。
――俺はBjörkはホモジェニックでガチハマリでしたけど。
それくらいの時期のキーボーディストのツアーメンバーなんですけど、イラン系の女の子で。中東のひとって独特の感性あるじゃないですか。あれでヒップホップ、ソウルみたいなののめちゃくちゃ気持ち悪いのをやってて、それがめちゃめちゃ好きだった。今でもけっこう聴くんですけど。
――それもMUSQISのなかに入ってる?
それはありますね、たぶん。かなり肉体的なんですよ。レコードとかのサンプリングがずれきったまま頭出ししてたりとか。めちゃくちゃ気持ち悪くて。音も低音がぼわっとしててオールドスクールのヒップホップ的な感じの。すごい変なんですけど。でもやっぱり肉体的なんですよ、聞こえ方が。ちょっと前だけとクリスデイブが生ドラムでサンプリングの頭出しのずれ込みかたをやってるんですけど、Pursuit Groovesとかそれに近い感じ。でも異質。
――そういうことをやりたいの?
やりたいかはわからないけど、面白いとは思う。必要だったらそういうエッセンスは使いたい。
――今までインタビューしてるなかでも相当のバンド数が出てるし雑多なものを感じるんだけど、その全部のいい部分を紹介したい?
そうですね。
――でも俺がべつにMUSQISを聴いててKORNみたいなところは感じないけどなぁ。
俺がベースかギターだったら出てるのかも。MESHUGGAHっぽさはあると思ってる。
――じゃあなんでMUSQISだとドラムなの?
確か、元々ドラムで誘ってた堀田壮一郎(MUSQISの初期メンバー)が「タブラが叩ける」という情報を得て。ドラム叩かせるよりタブラ叩かせるほうが面白いじゃんと思って、タブラを叩かせて、ドラムいなくなっちゃったから自分でやるっていう。
――MUSQISをやるときは絶対ドラムなの?
ひとりで演るときはギター弾いてますね。
――じゃあドラマーが集まってたらギターを弾くという選択肢はあるの?
やりたいけど、今はないですね。結局自分がドラマーで、ベーシックなところを守っておかないと、曲が成り立たないんで、現状だと。でもこれから作っていく曲で、俺がドラム叩いてたら絶対できないなということがあれば、別なドラマーを使いたい。
――今はベースとギターはそこまで魅力を感じてないというわけでもない?
そうですね。
――ドラム真剣にやってみようかなという感じ?
ドラム、真剣にやってますね。
――それはたまたま流れ的に?
最初ギターボーカルやってたときもそうなんですけど、どうしても「俺はベーシストなのにギター弾いてる」という感覚がどこかにあるんですよ、それをどこかで吹っ切れればそこから良くなる。ギターボーカルのときは、それで演奏とかライブがよくなった。ドラムも、はじめは「しょうがないから叩くか」という感じだったんですけど、「しょうがないからもっと上手くならないといけないな」と思って練習してたら、いつの間にか狭い世界だけどドラマーの人だと思われるようになった。
――欲みたいなのってない? いろんな楽器できる自分になりたくない? 俺も元々ギターやってて、東京出てきてドラムやる人いないからドラムやったんだけど、「ドラム上手くなりたいな」という熱がどんどん高まっちゃって。ギターもやったしドラムもできるようになったので、なんならベース、キーボードもやっちまえ、という欲が出てきた。
最初は「俺はベーシストだ」という感覚があった。でもJim O’Rourkeさんみたいな、あの人なんでもやるじゃないですか、ああいう人がいるってわかってからちょっと楽になった。
――欲はないんだ?
欲というかジレンマみたいなのしかない。やってみたいという気持ちもあるけど。
――MUSQISでなんでそんなにドラムやろうとするの? 自分がベーシストだと思ってるならベースの翼くん入れなくてもいいわけで。
でもそしたらドラムいなくなっちゃうんで。
――でもドラムふたりいるんでしょ?
ドラムいるんですけど、ドラムがいちばんフットワークが重いから。
――じゃあそこをなんとかしないといけないね、だからドラムやってるのか。
そっちのほうが話早いし。
――ドラムのほうがイニシアチブ取りやすいという話はすごくわかるな。ドラムはいちばん物事を作っていく人だから。
指揮者みたいですよね。立ち位置が。曲の長さや盛り上がりの合図も出せるし。