MENU

90年代を代表する恋愛小説のひとつに「冷静と情熱のあいだ」がある。過去に恋をした相手を忘れられずに生きるある男女を、男性と女性それぞれの視点で描いたこの小説の女性主人公・あおい。一見して相手に対して冷静に向き合っているようで、心の中では恋に深く囚われながら生きる彼女の姿は、FINLANDSの楽曲に登場する、恋愛に翻弄されながらそれでも恋に焦がれる主人公そのもののようだ。

そして、本記事にてレポートする、10月29日に新代田FEVERで行われた“LOVE TOUR FINAL ONEMANLIVE”も、彼女たちがステージ上で織りなす“冷静”と“情熱”がほとばしる、FINLANDSの今が感じられる記念碑的なライブとなった

2017年7月5日リリースのミニアルバム「LOVE」を提げて行った11箇所でのライブツアーののち、札幌・大阪でのワンマンライブを終え、いよいよツアーファイナルとなるこの日。今年最大級とも言われた台風の影響もあって東京は大雨。ライブ中のMCでも触れられていたが、どうやらFINLANDSは台風にとても好かれているようだ(『LOVE』発売日、大阪でのワンマン共に台風が日本を直撃)。

しかし、台風の影響もなんのその。開場10分前ともなると会場のエントランスエリアには入りきれないほどの人が集まっていた。コートの下に着込んだ様々なツアーTシャツやFINLANDSの代名詞ともいえるファー帽子を被ったファンたちの姿に、彼らが今日のライブをいかに楽しみにしていたかを感じさせられる。

4人分の楽器がセットされた誰もいないステージ上に落ちるスポットライトの照明は青色。外の寒さや雨で濡れた観客の姿もあいまって、フロア内にはどことなく緊張感が漂っている中、ほぼ定刻どおりにサポートメンバー2名を加えてFINLANDSが登場。

1曲目は「LOVE」でも冒頭を飾る「カルト」。特徴的な高音のギターリフを追いかけるようなベースラインが映えるこの曲。男女の恋愛を描いた歌詞ではあるものの、サビの“私の名前は悲劇なんかじゃない”という歌詞が、台風に直撃されながらも多くのファンが駆けつけたこの日の彼女たちの現場を歌っているようでとても印象的に響く。

続けて披露されたのは「ゴードン」。時折ギターを弾く手を止め、マイクスタンドを起点に身体をゆっくりと左右に回しながら満員の客席を見つめる塩入冬湖(Vo/Gt)の表情は、物憂げでありながらもとても嬉しそうだ。

控えめな色調に抑えられていたスポットライトが切り替わり、ステージ上をこの日初めての真紅に染め上げると、タイトルからは想像つかない空間を切り裂くような太いギターリフが先導する「バラード」がスタート。あふれんばかりのハンドクラップが、それまでどことなくフロアを支配していた緊張感の糸を断ち切ったことは間違いない。続く「クレーター」では、これまで比較的おとなしめにベースを弾いていたコシミズカヨがステージ中央にせり出し観客をあおる。ステージ上で小刻みに身体を揺らしながら歌う塩入と、ゆっくりと大きく身体をうねらすコシミズのコントラストもFINLANDSの魅力のひとつ。

「人生において興奮することはとても大事。趣味でも恋愛でも。トラウマにならなきゃ意味がない」という塩入のMC後に披露されたのは『LOVE』のリード曲「恋の前」。恋した相手が結婚詐欺師であることに気付きながらもそれでもその恋から逃れられない主人公の姿は、冷静に自分の状況を捉えていながらも恋の虜になってしまう、まさにFINLANDSの作る世界観の真骨頂のような楽曲だ。

川谷絵音をして「一瞬楽器みたいになる声が独特で、そこが好き」と言わしめる、喉奥から絞り出すような塩入の歌声が武器としてあげられがちなFINLANDSだが、今回のライブでなにより感じさせられたのはリズム隊の良さ。なによりコシミズと今年6月からサポートドラムとなった鈴木の相性が素晴らしい。コシミズの緩急をつけながらうねるようなベースラインと、鈴木の細かい手数を交えつつもキックを効かせたダイナミックなドラミングが力強いリズムを生み、ツインギターや塩入のボーカルを下支えすることで、楽曲の良さをますます際立たせているのだ。

ライブ中盤、「Hello tonight」「Baby sugar」「月にロケット」「Back to girl」「Jam」とミドルからスローな楽曲が続くパートでそのことがよく証明されていた。時としてアッパーな楽曲を続けることで会場内の空気を盛り上げたあとに続くミドルなテンポはライブの中だるみを生んでしまうことがある。しかしながら今回のライブでは、リズム隊の力強さ会場内の高いテンションをうまく牽引してくれることで、各楽曲の世界観への緩やかな没入に導いてくれる。このパートがミニアルバムリリースと全国ツアーを経て成長した“今のFINLANDS”を感じさせる、本ライブのもっとも象徴的な部分だったように思える。

「サービスナンバー」「フライデー」と『LOVE』の中でも一際アッパーなナンバーで再び会場のボルテージを高めたあとに披露されたのが「オーバーナイト」。

「誰もが幸せになりたいと思っているけど、全員が幸せになる瞬間なんて絶対ない。誰しもが夜を越えづらいときがある。夜が越えづらくなったら、気張らず自分のペースで夜を越えていきましょう。」というMCと、丁寧に歌われる塩入とコシミズのハーモニーが、この曲に込められた想いをゆっくりと会場中に伝播させていく。

「さみしいスター」「ナイター」を挟んで、最後に披露されたのは初のフルアルバム『paper』のリードナンバーである「ウィークエンド」。もはや彼女たちの代表曲と言っても過言ではないこのナンバー。塩入の絞り出すような声に、思わず口ずさみたくなるギターリフ、身体を揺さぶるベースライン、そして客席の歓声が絡まりあって大円団を迎えた。御多分に洩れずアンコールを行うことはなかったが、ステージ前の柵に登り、オフマイクで何度も「ありがとう!」と叫ぶ姿が、精一杯やりきった彼女たちの気持ちを現していた。

2016年初頭から次々に新たなガールズバンドが頭角を現し、まさにガールズバンドの戦国時代となりつつある昨今。冷静な視点で物事を捉えながら、その内にある情熱を歌詞と演奏で表現するFINLANDSはきっと、今後ますます頭角を現していくに違いない。ここからどこまで進んでいくか、彼女たちの今後の快進撃にも要注目だ。

撮影:suke、小野正博

[FINLANDSセットリスト]
01. カルト
02. ゴードン
03. バラード
04. クレーター
05. 恋の前
06. さよならプロペラ
07. マーチ
08. Hello tonight
09. Baby sugar
10. 月にロケット
11. Back to girl
12. jam
13. サービスナンバー
14. フライデー
15. オーバーナイト
16. さみしいスター
17. ナイター
18. ウィークエンド

リリース情報

『LOVE』
NOW ON SALE
¥1,500(税抜)

[収録曲]
01. カルト
02. フライデー
03. Back to girl
04. 恋の前
05. Baby sugar
06. サービスナンバー
07. オーバーナイト

FINLANDS / 「恋の前」

FINLANDS / 「オーバーナイト」

FINLANDS / 『LOVE』トレーラー

関連リンク

FINLANDS公式サイト
FINLANDS公式Twitter

この記事が気に入ったら
いいね!お願いします

最新情報をお届けします

TwitterでDiggityをフォローお願いします!

  • ツイートする!
  • ブックマークする!
  • シェアする!
Ai
  • Ai
仕事で全国出張しながら、各地のレコードショップやライブハウス、フェスと触れ合うアラサーサラリーマン。時折、メディアやブログに音楽にまつわる文章を書いたりも。フェス参加歴は15年以上で、毎年夏が待ちきれないフェスラヴァー。