最近、新宿や渋谷を歩いているとふとドラムの音が聞こえることが多い。偶然か必然か、自分が街に出ると高い確率でドラマーに遭遇する。日本だけでなくロンドンでも演奏をこなしてきた彼の名は、ユージ・レルレ・カワグチ。筆者の大学時代からの友人でもある。今回、普段から交流のある彼が、まずはどんな人間なのかを知ってもらうべくインタビューを実施。路上演奏のあれこれや今の活動について、ひいてはロンドンと日本の音楽に対する姿勢の違いについて聞くことができた。
[メンバー] | ユージ・レルレ・カワグチ(#stdrums / ANOTHER DIMENJION / 渋谷サイファー) |
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[取材・文] | 鈴木”もぐら”悠太郎 |
路上演奏の最初のキッカケは3.11の震災
――まず、あなたは今何をやっている人なのかを教えてください。
レルレ質問が雑だね(笑)。路上で叩いたり、バンドで叩いたり、ドラムのレッスンやレコーディングをしてるただのドラマーだよ。
――最近は路上ライブでレルレを見かけることが増えたな~って思うよ。路上ライブをやる日は決まってるの?
レルレ特別決まって”いつ”というのはないんだけど、金曜日は決まって渋谷でやってる。あとは時間ができたときにやるようにしてる。
――そもそもの質問なんだけど、なんで路上でドラム演奏をするようになったの?
レルレメトロノームを使ったドラム練習に飽きてしまって、ほかに何かないかな? と思ったときにiPhoneのアプリで「GarageBand」があるのを知って使い始めたのがきっかけ。元からループ音源がいっぱい入ってるんだけど、ある日それを適当に繋げてみたら結構いいトラックが出来てさ。「この音源を使って何かできないかな?」って。そう思ってたときにロンドンに行くことになったの。
――唐突だね。それは何か目的があったの?
レルレいちばんは時期が4月でチケットが安かったってのがあるんだけど(笑)。大好きなLed Zeppelinのドラム、ジョン・ボーナムの墓参りという名目で。
――その流れで路上演奏に行き着いた?
レルレありとあらゆる場所に多種多様なアイディアを持つストリートパフォーマーがいるのを見て、自分も何かできないかな? と思ったときに、さっき言った「GarageBand」に繋がったんだよね。GarageBandでトラックを作ってドラムを叩いてみようと。帰国してすぐに準備に取り掛かった。
――それがいきなり路上でやる! ってなるのは驚きだけどね(笑)。機材の準備とかはどうしたの?
レルレ実は路上演奏の最初のキッカケは3.11の震災が起きたとき。なにかできることはないかと思って、周りの機材を集めて簡易的なドラムキットを作って仲間と募金活動をしていたんだよね。なのでそのときの機材を応用したのだけど、持ち運びも考えて軽量化は色々考えた。スネアスタンドは使わずハイハットから腕伸ばしたりとか、ハイハットはサイズを切って小さくした。バスドラは最初カホンに座ってキックペダルを逆さに踏んでいたのだけど、GarageBandで作った音源を鳴らすスピーカーもカホンの後ろ側を切ってその中に入れるとか。今では結果的に移動に使ってるスーツケースをバスドラ代わりにしてるしね(笑)。で、道具が全部揃った2014年7月から渋谷の路上でやり始めたかな。
「最終的にはロンドンのストリートで演奏したい」って目標で始めた
――ちょうど一年前くらいだね。いちばん初めて路上でやったときはどうだった? 緊張した?
レルレ最初はJR渋谷駅のヒカリエ方面出口でやったんだけど全然ダメだったよ(笑)。友人がひとりお金を入れてくれたくらい。まぁでもこんなもんかな~。またやろ~くらいに思ってた。「最終的にはロンドンのストリートで演奏したい」って目標で始めたので、日本での演奏はいわば「練習」と思っていたから凹みもしなかった。
――それでも続けるハートの強さはさすがだよね。
レルレそんなある日、見てくれた人が「こんな端じゃなく、もっと街のど真ん中でやったほうがいいよ! そして売るためのCDも作った方がいい」って言ってくれて。その後、その人の言うとおり場所移動して人通りの多い場所でやったら確かに反応が全然違って。列が列を呼ぶじゃないけど、人だかりができたんだよね。「この人の言うことは正しい! 言うこと聞こう!」って思って次の日に早速CDを作った(笑)。
――確か7月末くらいにCD出してたから、本当に路上初めてすぐだったんだね。ところでこの路上演奏は#stdrumsと名乗って活動しているわけだけど、この名前にはどんな意味があるの?
レルレストリートドラムスの略なんだけど、別に活動名を決めていたわけじゃなく、元はTwitterのハッシュタグでしかなかったんだよね。ユージ・レルレ・カワグチがやる#stdrumsって感じ。まぁただなんかしっくりきてたので、それを活動名にしちゃった感じ。
――そこで手応えを掴んで活動頻度が上がっていったと。
レルレ自分にとってはロンドンに向けての練習だからね。反応がいいのはありがたいし。実際CDも意外と売れる(笑)。びっくりしたね。そうこうしているうちに気付いたら#stdrumsが自分の活動の中心になってしまったというか。
ANOTHER DIMENSION / Yuji Kawaguchi- DrumCam