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最後の約束を

ソリッドなバンドアンサンブルが初っ端から高揚感を煽る「slope」。続く「遠くへ」では、郷愁を誘うメロディが胸を打つ。幾度となく観てきたdeidのライブのなかでも、この日は歌、個々の演奏、バンド全体の熱量……どれを取っても圧倒的だった。泥臭く不器用で、決して華があるタイプのバンドではないけれど、演奏でバシッと見せてくれる、バンドマンとしての彼らは――とりわけ今この瞬間の4人は、きっと目の前にいる人たちの多くにとってヒーローなのだと思わずにはいられなかった。

加藤「こういうときって何しゃべればいいのかなー!? ケンゴ(山本)は3年半、さとちゃん(佐藤)は17歳のときから。活動を共にできて良かった」

はにかみながら、deidを卒業するふたりへの感謝を述べる加藤。そんなふたりも目配せし合うなど、ちょっぴり微笑ましいやりとりも。しかし、独特の緊張感……メンバー自身もそう言っていたが、普段のライブはおろかワンマンライブすらも超える、ある種のプレッシャーはあったように思えた。

そんな空気を漂わせつつ、「バス停」の演奏が始まる。センシティブに情景を描いていくAメロと、一気に感情を爆発させるサビとのダイナミクスがライブ映えするこの曲。“声にならない叫び声で”“想いを消して”という痛切な思いと相まって、キュッとなるくらい心が揺さぶらされる。そこへ畳み掛けるように、一癖も二癖もあるdeid節が唸る「合言葉」「-1cm」を展開。ダウナーなメロディと、どこかわだかまりの残る歌詞が頭の中を占領していった。

2度目のMCでは、今回脱退するふたりのdeidに加入した経緯が明かされる。

加藤「最初はベースがいなくて、メン募(メンバー募集)したら連絡をくれたのがさとちゃんだったんですよ。この人頭おかしいんじゃないかってくらい、メールに好きなバンドをズラーッと書いてきて(笑)。さとちゃんがいなかったら、(deidは)バンドっぽくならなかったと思う。ケンゴは前のドラムが抜けたときに、知り合いにちょうど時間があるヤツがいるって紹介してもらって、ライブを観に来てくれたんです。新宿JAMのフロアライブに、麦わら帽子で(笑)。メンバーのなかでいちばんしっかりしてます」

ふたりの今後についての話になると、佐藤は「宅録をやるらしい」、山本は最近体を鍛えているとのことで、「SASUKEに出ようと思う」とコメントした。

残る加藤、荒川慎一郎(Gt)のふたりは、今後もdeidとして音楽を続けることを宣言。「この曲を4人で作れて本当に良かったと思います」、そう言って演奏し始めたのは「海岸」だ。自身の目で見た景色を、鮮やかに描写した歌詞が魅力のひとつであるdeid。同じ場所でもたくさんの人の、十人十色のストーリーが存在するように、deidの曲にもまた、言葉数は少なくとも独自の感情が溢れている。

「次は、“俺たちはこのまま死ぬまで前を向いていきたい”という思いを込めた曲です」と、今の4人の決意とも重なるであろう言葉を添えた「リバーサイド」。彼らが年越しライブを行ったときの新年1発目にも演奏され、1stフルアルバム『SCENE』の1曲目も務めた、疾走感がありスタートにふさわしい楽曲だ。息を切らし、一切の手加減なしに全力疾走するかのようなプレイを繰り広げる4人。ステージ上でみなぎる熱量に、観客も一心不乱に呼応する。そんな光景は、チープな表現かもしれないが、“これこそライブハウスの醍醐味”だと思わせるものだった。

これまでほとんどMCで語ることのなかった荒川がついに口を開く。

荒川「ふたりが脱退することが決まってから今まで、正直ピンときてなかったけど、今日思ったのは、“一緒にバンドやってくれてありがとう”」

シンプルな感謝の言葉に、「めっちゃ良いじゃん!」と加藤が茶化しながらも続ける。

加藤「一緒にひとつのものを作る素晴らしさを実感した。この4人でアルバムを作れて、ライブができて、MVを撮れて良かったと思います。次は、“別々の道に行くけど、一度交わったらそこで終わりじゃない”っていう歌を」

場の空気がしみじみしてきたところで曲紹介し、演奏を始めた「約束」。“これで最後にできないから”“僕は最後の約束した”。名残惜しみながらも次へ向かい、“また会おう”と約束を交わすかのように、4人が向かい合って音を鳴らすシーンでは胸がじんと熱くなった。ここで“intersection”というイベントタイトルを思い出す。“交差点”などの意味を持つこの言葉――4人でdeidとして活動してきた数年間すべてが、彼らにとってのintersectionだったのだ。

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松井 恵梨菜
  • 松井 恵梨菜
本業である音楽関係の雑誌編集に忙殺されながらも、ライターを目指して勉強中。"ETERNAL ROCK CITY.2012"オフィシャルライターなどの経験あり。難しい評論ではなく、心に伝わる文章が書けるようになりたいです。通称"ぴよ"。