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2011年10月14日に結成されたQOOLANDというバンドは『Download』という無料音源の配布から始まった。一人でも多くの人に聴いてもらうための行動、方法だった。そのバンドは2016年10月15日、大勢のファンに囲まれる中メジャーデビューを発表した。もっと多くの人に音楽を届けるための決断をくだしたのだ。2011年の彼らは想像していただろうか。自分たちがメジャーデビューするということを。そして、その発表に嵐のような拍手が起こり、感動して泣きだす者まで現れるということを。これは、嘘や夢なんかじゃない。QOOLANDというバンドが伏線を回収していった軌跡の1つに過ぎないのだ。

2016年10月15日、QOOLANDは渋谷TSUTAYA O-Crestにて5周年企画“本気で演りたい”を開催し新たな伏線を引いた。この日、彼等と共に肩を並べたのはThe Floorとフィッシュライフ。The Floorがポップロックを響かせ爽やかな風をステージに吹かせたかと思うと、フィッシュライフは刺激的なサウンドとパフォーマンスで観客を魅了した。両バンドのQOOLAND5周年を祝う全身全霊の演奏は、〈本気〉以外のなにものでもなかった。主役を迎える準備は万全である。

メンバーがステージに現れると、大きな歓声と拍手に会場が包まれる。登場する一人ひとりを愛しそうに見つめる観客の視線は、5周年を心から祝福していることを物語っていた。感慨深そうに川﨑(Gt)が一瞬、天を仰ぐ。

言葉を発する前に音がなった。オープニングを飾ったのは、昨年クラウドファンディングを成功させて発売したアルバムのリード曲である『Come Together』。サビの「Come Together」のところでは一斉に拳があがり、その一体感に鳥肌が立った。平井(Vo/Gt)が「QOOLANDです。どうぞよろしく」と発し導かれたのは『Shining Sherry』である。この曲は彼らが「QOOLANDリクエストアワード2015」という楽曲人気投票ライブを行った際に堂々の1位を飾った曲だ。まだ、音源化されていないライブ限定の曲だったにも関わらずである。目の前にいるファンのことを思い紡がれた「誰でもいいなら君がいい」という歌詞が、いつも以上に心に沁みる。そうなのだ。QOOLANDはいつだって目の前の〈君〉と歩んできたバンドなのだ。

歌詞の良さにしんみりしている暇など、彼等は与えてくれない。菅(Ba)が「俺たちと一緒に体操しよう」と告げると『熊とフナムシ』が始まった。体操指揮官である菅に誘導されるまま、各々が頭を振り、体を揺らす。さすがQOOLANDのファン、振付は完璧だ。その光景に思わず川﨑がにやりと口角をあげる。いつもより気持ち早めに感じるテンポは、抑えきれない彼等の興奮を肌で感じるようだった。勢いやまぬまま『ドグラマグラ』に続いていく。長年愛されてきた曲の登場に自然とクラップが沸き、観客の口の動きが平井とシンクロする。『セレクト(うーっはー!!)』は、菅の「この日この場所を選んでくれたあなたたちにセレクトという曲を!」という言葉により導かれた。会場を見渡し一人一人の顔を目に焼き付けようとするメンバーの姿に目頭が熱くなる。「僕らは君を選んできたんだ」というフレーズがここまで説得力を持つことがあるだろうか。

MCで平井は「まさか2016年を迎えるとは思わなかった。僕は5年前より、もっとQOOLANDを使って人としてミュージシャンとして成長していきたい」と語った。「5年分のあったかいものと冷たいものを詰め込んだ曲をやります」と紹介されたのは『I hate』。平井がひたすら自分に「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせて作った曲で、不安の中に揺れる感情が激しいセッションプレイに反映されているようである。タカギ(Dr)のドラムに繋がれたのは『片道4,100円』。前身バンドであるThe DARARSの『太宰治』をブラッシュアップした曲で、ギターの単音が切なく響く。目を細めて歌う平井の姿は、帰るつもりがなく東京に出てきたあの時を思い出しているかのようだった。平井の弾き語りからはじまった『風の歌』は、穏やかで優しい歌詞とエモーショナルな演奏の対比が色濃く表現された。曲が終わった後も響き続けるクラップをBGMに平井は語る。「5周年、455本目のライブです、本日が。今日を迎えられることがゴールじゃないのにこんなに嬉しいのは、聴きに来てくれる人と同じ理念をもって一緒のステージに立ってくれる仲間がいるからかなと思います。この曲を、すごく大切に歌おうかなと思います。僕らの活動、やっていくことを一週間に凝縮した1曲。Weekという曲を聴いてください!」タカギがカウントを叫び『Week』が始まった。穏やかで緩やかな曲調に、フロアが揺れる。丁寧に1音1音を伝えていく彼らの演奏は〈大切に歌う〉を体現するには十分すぎるくらいだった。

MCを挟んで披露されたのはバンドの初期からずっと歌われている『白夜行』。曲名がコールされた瞬間、1度空気の流れが止まるように感じた。それだけ彼らにとって、またファンにとって重要な曲なのであろう。平井の「一緒に歌ってください」という声かけに精一杯応えようと、観客の口が大きく動く。長い間、大切に大切に育て上げてきた曲であることがひしひしと伝わってくるグルーヴがそこには存在していた。間髪いれず『言えない人が言えてたら』に続く。平井が社会から目を背け創作に逃げ込む中、50分弱で書き上げた歌詞のなかには当時の彼がたたずんでいるようだ。甘く優しい平井の声とチョーキングやビブラートを活かしたギターソロは、完璧に泣かせにきていた。そして、『LET IT DIE~夜のやり方~』を初披露。ギターのハウリングの幻想的な世界から広がっていったのは、リズム隊のビート感が腹の底に響くアップチューン。彼らのセッション能力の高さを証明するような曲で、これぞQOOLANDといった印象だ。「何かを残すために走ることにした」という歌詞には迷いない彼らの決意が刻まれていて、初めて聴いた曲なのに胸にスッと入ってきた。心に直接訴えかけるというのは、こういうことを言うのだ。

楽しい時間というものは、いつだって過ぎるのが早い。あっという間にラスト2曲となった。そのイントロで観客の目を輝かせたのは、“RO69JACK 2013”で優勝を掴んだ「勝つまでが戦争」である。タカギによるテクニカルなドラムのイントロ、平井と川﨑によるギターのツインタッピング、菅による渾身のシャウト。すべてが化学反応を起こし、QOOLANDというバンドを形成していることを力強く物語っていた。ラストを前に平井が胸中を語る。「本当に来てくれて10月15日を捧げてくれてありがとう。一生懸命に生きていたら、歌にもステージにも反映される。本当に大切に演奏したら大切な音がでてくるし、それは技術とかを超える。音楽を通して僕に教えてくれたのはQOOLANDと皆さんでした、本当にありがとう」と。そして、なんの前触れもなく重大発表を口にした。「8月に作った『凛として平気』という曲をもって、12月にメジャーデビューします。」事前にSNS上で「発表があります」とQOOLANDから告げられていたファンであったが、予想を超えた報告に会場がどよめく。状況を把握できた人から次々と拍手がわき、「おめでとう」と祝福の声があがった。中には目に輝くものを浮かべ、鼻をすする人の姿も見受けられた。鳴りやまない拍手に、彼らが愛されていることを感じずにいられなかった。

「超気合いれてね、最後にその曲をやろうと思うんです」と告げ、平井は大きくブレスをとる。それと同時に、さっきよりも力強くギターがかき鳴らされた。今年の“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016”で初披露された『凛として平気』。「落ち込んだっていいし 消えたい日もあっていいし」そんな日を幾度も越え、くじけずに前を向いてきた彼等だからこそ伝えられる歌がある。伝えられる今がある。そんなQOOLANDらしさが濃縮されたような曲だ。拍手喝さいの中、「これが新宿から来ました、QOOLANDってバンドです!」と平井が叫び本編は幕を下ろした。

しかし、彼らが去ったあとも拍手が鳴りやむことはなかった。自然と加速していくアンコールの声は、彼等の再来を待ちきれない様子だ。ほどなくして、メンバーがステージに現れた。平井が口を開く。「メジャーデビューしても、今まで通り僕はやるつもりです。レコード会社が変わったからどうこうなってしまうとか心配している人もいると思いますが、こんな猛烈な音楽をやっているので今更どこにあわせるとかもないと思うんですよね。僕は僕の誰かに歌って欲しかったことを、歌い続けていこうと思います」その宣言を受けて始まったのは『ゆとり教育概論』。QOOLANDが初めて“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”に出た際にも演奏した曲で、大切に歌い続けてきた彼らの信念を強く感じた。「有名になろう」この一節を彼等は今まさしく、現実のものにしようとしている。「We are QOOLAND!」と声高らかに宣言し、『Today Today Today & Yesterday』に繋ぐ。「立てているステージを作っているのはそこに立っている人だけではない」ということを忘れないために作られたという歌は、この日を共に作ったすべての人へ向けた感謝が溢れんばかりに詰め込まれていた。「今年もよろしく!」と叫びライブを締めくくった平井と、深々と頭を下げステージを去る彼らのすっきりしたような表情が、本気で演りきった何よりの証明と言えるだろう。

2011年のバンド結成から挫折と再起を繰り返してきたQOOLAND。彼らが「解散するタイミングはいくらでもあった」と語る通り、決してその道のりは順風満帆ではなかっただろう。しかし、だからこそ多くのことに気づきバンドとしての強さを築きあげてきたことも間違いないと感じる。何かを伝えるために走り続ける彼らは、これからも多くの伏線を回収し我々を楽しませてくれることだろう。誰でもいいわけではないのだ、QOOLANDがいいのだ。

[セットリスト]
01. Come Together
02. Shining Sherry
03. 熊とフナムシ
04. ドグラマグラ
05. セレクト(うーっはーっ!!)
06. I hate
07. 片道4,100円
08. 風の歌(新曲)
09. Week
10. 白夜行
11. 言えない人が言えてたら
12. LET IT DIE~夜のやり方~(新曲)
13. 勝つまでが戦争
14. 凛として平気(新曲)
En. ゆとり教育概論
En. Today Today Today & Yesterday

QOOLAND / Photo by 中磯ヨシオ(@tarururutu

[中磯ヨシオ プロフィール]
アーティストの映像・写真撮りを中心に活動。
撮られる者の感情を切り取ったアートワークに定評がある。

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QOOLAND公式サイト
QOOLAND公式Twitter
QOOLAND公式Facebook

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坂井 彩花
  • 坂井 彩花
元楽器屋のお姉さんの経験を持つ音楽ライター。感情に働きかける文章が得意。中高で吹奏楽部、大学で軽音楽部に所属していた典型的な音楽だいすきっ子。積極的にいろいろなライブに出向いてはライブレポート等を書いている。